| 情報提供 TKC税務研究所 |
| 【文献番号】 | 28141559 | ||||
| 【文献種別】 | 判決/神戸地方裁判所(第一審) | ||||
| 【裁判年月日】 | 平成19年3月9日 | ||||
| 【事件番号】 | 平成16年(行ウ)第28号 | ||||
| 【事件名】 | 重加算税賦課決定処分取消請求事件 | ||||
| 【判示事項】 |
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| 【裁判結果】 | 棄却(確定) | ||||
| 【参照法令】 | 国税通則法65条1項、68条1項 租税特別措置法33条1項・2項、33条の5第3項2号 |
| 1. | 事件の概要 |
| (1) | DはX(原告)の夫で、E及びFはXとDの間の子であり、G社はDが代表取締役を務めている会社である。A社はオランダ法人で、X、D及びCが役員となっていた。 また、B社は、A社の株式の100%を保有しているオランダ法人の持株会社であり、X、D及びCが役員となっていた。 |
| (2) | Xは、平成7年4月19日、大阪市との間で、所有する本件土地を市が施行する公園整備事業の用に供するため、4億3465万7696円で売却する旨の契約をし、同日譲渡した(本件譲渡)。 |
| (3) | Xは、平成8年3月1日、平成7年分の所得税の確定申告書(本件確定申告書)に譲渡所得計算明細書等を添付し、Y税務署長(被告)に提出した。 本件確定申告書には、不動産所得の金額1854万4158円、配当所得の金額678万2182円、給与所得の金額1712万9000円及び分離課税の長期譲渡所得の金額零円と記載され、取得する予定の代替資産及びその取得価額の見積金額並びに本件譲渡に係る譲渡所得の計算に当たり、租税特別措置法(措置法)33条の規定の適用を受ける旨の記載がされていた。 |
| (4) | Xは、平成9年3月24日、代替資産を取得した旨を証する書類として、「平成7年分収用代替資産取得のご報告」と題する書面(本件報告書)を提出した。 本件報告書には、「水族館に使用する大型水槽、機械、構築物タンク22台及び水循環設備並びに据付工事費用」(本件資産)を「351万7675英ポンド(6億5252万8712円)」で、「平成8年3月25日から同年12月4日」の間に取得し、「平成9年4月1日から事業の用に供する見込み」である旨が記載されていた。 |
| (5) | Xは、平成14年10月7日、Y税務署長から「本件資産の取得はなかった」との指摘を受け、平成7年分の所得税に係る修正申告書を提出した(本件修正申告)。 Y税務署長は、同年11月29日付けで、本件修正申告により増加した納付すべき税額5053万円を基礎として重加算税賦課決定処分を行った(本件処分)。 |
| (6) | Xは、仮装したところに基づき納税申告書を提出した場合に当たらないとして、適法な不服申立手続を経て、本件処分の取消しを求める本件訴えを提起した。 |
| 2. | 本件判決の要旨 |
| (1) | 本件資産の取得者(所有者)及び仮装隠ぺいの存否 |
| ア 認定事実によると、A社が、本件資産を含めた水族館及び設備を自社の資産として貸借対照表に計上するとともに、税務当局に対して減価償却の対象として届け出ていること、本件資産の購入資金に充てられた本件金員(Xがイギリスに所在する銀行のX名義口座に送金した300万英ポンド)については、B社及びA社が、XからB社に対する貸付金及び同社からA社に対する貸付金として会計処理していることにかんがみれば,本件資産はA社がこれを購入し所有しているものと認められる。 | |
| イ XもDも、B社及びA社の取締役であって、その決算書類の作成に関与していた者であり,約6億円という高額な資金の動向についてCに任せきりで全く知らなかったなどとは考えられず、本件資産をXが購入したことを示す売買契約書等の客観的な書類は一切示されていない上、X主張の各リース契約書の締結された時期や内容等も不自然であり、これらは、ことさら、本件リース契約及び別件リース契約の存在を仮装するため作成されたと考えざるを得ず、C又は他の関係者が、X及びDからの指示なく独断でかかる工作をすることはあり得ないから、Xに仮装隠ぺいがなかったとは認められない。 | |
| (2) | 重加算税の賦課要件の充足 |
| ア 措置法33条の5第3項2号により読み替えられた国税通則法65条1項の規定によれば、@措置法2条1項10号に規定する確定申告書(当初の確定申告書)が提出された場合において、A義務的修正申告書(措置法33条2項の適用を受けた者が、代替資産の要取得期間を経過した日から4月以内《義務的修正申告期限》に提出する修正申告書)が提出されずに義務的修正申告期限が経過した後、すなわち、納税者が当初の確定申告書のとおり過少に納税義務を確定させた後に、義務的修正申告書が提出された場合又は更正があった場合に、過少申告加算税が賦課されることとなる。 そして、このような場合における重加算税についてみると、国税通則法68条1項の賦課要件は、@同法65条1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合において、A納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し、Bその隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたことであるところ、@の要件について、国税通則法65条1項が措置法33条の5第3項2号により読み替えられ、「当初申告書を提出したが、義務的修正申告期限内に義務的修正申告書を提出せず、当初申告書どおりに過少な納税義務を確定させたこと」を要件として適用されることとされている以上、Bの要件もこれに対応させ、納税者が、義務的修正申告期限内に、収用等に係る所得について、隠ぺい・仮装行為を行い、その隠ぺい・仮装行為に基づいて義務的修正申告期限内に義務的修正申告書を提出せず、当初申告書どおりに納税義務を確定させたのであれば、Bの要件を充足すると解すべきである。 このことは、代替資産を全く取得していないにもかかわらず、取得したかのように隠ぺい、仮装して、義務的修正申告書を提出しなかった場合には重加算税が賦課されないが、取得資産の価額が見積額に満たないときに、その価額を隠ぺい、仮装して、税額が過少となる義務的修正申告書を提出した場合にはこれが賦課されるとすることが明らかに均衡を失し不当であることからも、当然の解釈というべきである。 |
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| イ Xは、明文の根拠なくして重加算税の賦課要件を読み替えることは法律の根拠のない課税要件を作出することであり、租税法律主義(憲法84条、30条)に違反し、また、納税義務の確定について、措置法33条の5第1項所定の義務的修正申告書の不提出という不作為により納税義務を確定すると解することはできず、同条の5第3項の立法趣旨からもこのように解せない旨主張するが、措法33条の5第3項2号は、代替資産等の取得価額が見積価額に達しなかった場合等において、義務的修正申告期限内に義務的修正申告書が提出されず、同期限後に、その修正申告書が提出され、又は更正があったときには過少申告加算税を課すために規定されたものと解され、さらに国税通則法68条1項が同法65条1項を前提に規定されている以上、それに対応した前記解釈をすべきであることは明白であり、このような法律に従った解釈が租税法律主義に反しないことは明らかである。 | |
| ウ Xは、(1)イのとおり、「その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し」たというべきであるから、重加算税の課税要件を満たすものといえる。 | |
| (3) | 除斥期間について |
| Xは、本件資産の取得に関し、自己が取得していないことを認識した上、本件報告書等をY税務署長に提出したものと認められ、これらの行為は、国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当すると認められ、したがって、本件処分は同項が規定する除斥期間内に行われたものといえる。 =棄却(確定)= |
| 3. | 本件判決に対するコメント |
| (1) | 国税通則法68条1項は、過少申告加算税に係る重加算税の賦課要件に関して、「65条1項の規定に該当する場合」(要件@)で、「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」(要件A)、「その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」(要件B)と規定している。 本件において、Xは、平成8年3月1日に本件確定申告書を提出し、義務的修正申告期限後である平成14年10月7日、本件修正申告書を提出しているから、措置法33条の5第3項2号の読替規定により(同号は、「当該修正申告書で第1項に規定する提出期限後に提出されたもの・・(中略)については、・・(中略)・・第65条1項・・(中略)・・中『期限内申告書』とあるのは『租税特別措置法第2条第1号第10号に規定する確定申告書とする。」と規定し、同号は、「所得税法第2条第1項第40号に規定する確定申告書をいう。」と規定し、さらに、同号は、「第2編第5章第2節第1款及び第2款(確定申告)(第166条において準用する場合を含む。)(当該申告書に係る期限後申告書を含む。)をいう。」と規定している。)、要件@を満たしていることになり、また、判決の認定によると、Xは、本件資産を取得したかのようにするために隠ぺい・仮装行為(本件不正行為)を行い、Y税務署長に本件報告書を提出したというのであるから、要件Aも満たされていることになるが、本件確定申告は、代替資産を取得する見込であるとしてなされたものであり、そして、本件不正行為がなされたのはその後のことであったから、要件Bの充足、すなわち、隠ぺい又は仮装したところに「基づき」納税申告書を提出していたとき、に当たるかが問題となる。 |
| (2) | この論点につき、Y税務署長は、「Xは、本件資産を取得しておらず、かつ、そのことを認識していたにもかかわらず、本件報告書等を提出するなど、あたかも本件資産を取得したかのように隠ぺい,仮装して、義務的修正申告期限内に義務的修正申告書を提出せず、本件確定申告書(当初申告書)どおりに過少納税義務を確定させたのであるから、重加算税の適用要件を充たしているといえる」と主張し、これに対して、Xは、本件において、国税通則法68条1項にいう「『納税申告書』に当たりうるのは,平成8年3月1日に提出した本件確定申告書のみである一方、Y税務署長が仮装行為と主張するXの行為は、平成9年3月24日に本件報告書を提出したこと及び同年5月ころに本件リース契約に係る協定書を提出したことであって、いずれも本件確定申告書提出後の行為であ」り、「このように、仮装行為とされる行為がいずれも本件確定申告書の提出の後になされている本件においては、Xが、仮装したところに基づき本件確定申告書を提出したという関係になく、この点においても重加算税賦課の要件を欠く」ものであり、Y税務署長の主張は「明文の根拠なくして重加算税の賦課要件を読み替え、法律の根拠のない課税要件を作出することであり、租税法律主義(憲法84条、30条)に違反」し、また、「納税義務の確定について、措置法33条の5第1項所定の義務的修正申告書の不提出という不作為により納税義務が確定すると解することはでき」ないと主張していた。 |
| (3) | 要件Bに関しては、過少申告をすることが「当然に『その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していた』ことになると解することは、国税通則法68条1項の文理上は無理があり、あくまでも、申告書の提出そのものとは別個の何らかの『隠ぺい・仮装』行為があり、申告書の提出がこれに『基づく』ものであることが必要であ」るとされ(近藤崇晴「確定的な脱税の意思に基づき顧問税理士に株式等の売買による多額の雑所得のあることを秘匿して過少な申告を記載した確定申告書を作成させたことなどにより所得税の確定申告が重加算税の賦課要件を満たすとした事例」最高裁判所判例解説民事篇平成7年度(上)471頁)、判例において、「重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する」解されている(最高裁平成7年4月28日判決・LEX/DB22007861)。 本件において、Xは、本件確定申告書を提出した後義務的修正申告期限までの間において、その申告内容に合わせるために本件不正行為を行ったものであるから、国税通則法68条1項の適用上、本件不正行為は本件確定申告の内容となり、本件不正行為に合わせた過少申告がなされた(換言すれば、本件不正行為に基づき本件確定申告書が提出された)と評価することができ、したがって、本件処分を適法とした本判決の判断は、正当なものということができる。 |
| (4) | 本判決は、措置法33条の5第3項第2号の読替と国税通則法68条1項の適用に関し、「義務的修正申告書が提出されずに義務的修正申告期限が経過した後、すなわち、納税者が当初の確定申告書のとおり過少に納税義務を確定させた後に、義務的修正申告書が提出された場合又は更正があった場合に、過少申告加算税が賦課されることとなる。」との解釈論を示した上、「Bの要件もこれに対応させ、納税者が、義務的修正申告期限内に、収用等に係る所得について、隠ぺい・仮装行為を行い、その隠ぺい・仮装行為に基づいて義務的修正申告期限内に義務的修正申告書を提出せず、当初申告書どおりに納税義務を確定させたのであれば、Bの要件を充足すると解すべきである。」との初めての判断を示したものであり、Xが上記(2)で指摘する点(「仮装したところに基づき本件確定申告書を提出した」ことにならない、「義務的修正申告書の不提出という不作為により納税義務が確定する」ことにはならない等)について、十分に納得できる説示とはなっていないようにも思われるが、義務的修正申告に関わる重加算税の賦課要件の先例として、意義を有しているということができる。 |
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